ラブぜろ? 一話

オリジナル小説
過去に書いた自作小説の成れの果て
PCに眠らせておくのもなんなので、ここに書いていこうと思います。
同じく短編連作の、現代不思議系ラノベ的小説。




 今日も一日が終わりを迎える。

 朝起きて朝食と昼の弁当を作り学校へ、終われば近くにある喫茶店へバイトに向かい、仕事を終えて家へ帰る。片乃瀬瞬(かたのせしゅん)は一日を機械のように、作業的に過ごしていた。
 
 十五歳の中学三年生、青春真っ只中の若者がそれでいいのかと周りに言われるが、特にこれと言って不満もなく、むしろ何も変化のない平穏な日々を過ごせることに幸せを感じていた。

 自分は人よりも過剰に平穏を求めている。愛してると言ってもいい。
 変わったことが起こらない穏やかな日常。それは瞬が常日頃から求めてやまないものであった。

 こんな願望を持った原因は父親にある。

 父親は仕事の当たり外れが多く、瞬は物心つくころから金持ちになったり貧乏になったりを繰り返している。今の住まいは八畳一間のアパートだ。

 そんな生活を続けていれば、当然子供は苦労する。

 現に母親が別居中だ。当然家事は自分が担当することになる。その他として、引越しが多かったり借金の取立てが来たりと、慌しすぎる子供時代を送ってきたのだ。知り合いと休日に遊ばないのは、いつ転校するかわからない生活ゆえだ。あまり接しすぎても、別れの時に色々引きずるのであまり深く関わらないようにしている。

 それも年が経てば慣れてしまったものだが、そんな過去を持っていれば必然的に静かな生活というものに憧れる。まるで老人のようだ。無邪気さと素直さはどこかに置き忘れてきたらしい。
 
 別にそのことについて父親にどうこう言うつもりはない。恨んでいないと言えば嘘になるが、何を言っても過去が変わるわけではないのだ。所詮なるようにしかならない。
 
 こんな過去を持つがゆえに、瞬は小学生のころに書いた将来なりたいものアンケートに、夢は公務員とどでかく記載したことがある。今でもあまり変わっていないが、慌しくない静かな生活が送れるだけの財産があればそれでいい。

 常に現実を見据える少年は、このまま何事もなく日々が続けばいいなと願っていた。

 だが、望みは容赦なく打ち砕かれた。それも、まったく予想していなかった方向へ。

 本日もバイトを終え、自転車のベルを鳴らしながら帰路につく途中、通い慣れた道がどこか別なものに変わってしまったような違和感を覚えていた。
 自転車を止める。動きを止めたことでライトは消え、世界は夜に包まれ始める。視界一面真っ暗だった。

(ああ、街灯が消えてるのか)

 少しばかりの月明かりで道が薄暗く見えるが、それでも歩くには心もとない。こえーこえー、とつぶやきつつ自転車に跨ると、小さな光が道を照らした。

「よし、行……あれ?」

 瞬はペダルを踏んだ体勢のまま静止する。

 自分はまだ自転車を動かしていない。なのに明かりがある。

 辺りを見回してても誰もいない。あるのは前方に浮く光体。

 人魂? と思いのほか冷静な頭が、人の知恵によって生まれた概念たる単語を浮かばせる。けど人魂って普通火が揺ら揺らしてるイメージだよなとかぶりを振った。

 じゃあ、なんだアレ。

 
 頭から送られる答えは、理解不能とのこと。うん、わからん。

 つつぅー……と冷たい汗が頬に滴る。

 しばらく無言のまま、微動だにせず光体を見据える。光体は浮いているだけで瞬と同じくその場に留まっている。

 しゅるしゅる、と何かが地を這うような音がする。発生源は後方。同時に、霧雨に降られたように、体中とアスファルトの地面が水で濡れた。

 さび付いた機械のようにぎこちなく首を向ける。

 狙っていたかのようなタイミングで街灯が活力を取り戻し、自らの存在意義を確かめると同じく、瞬の眼にそれの存在を世界に知らしめた。

「う……あ……え……」

 それを表すなら蛇男、と人は口を揃えるだろう。手足や体などの四肢は至って普通の成人男子。しかし、首から上が蛇そのものという異端の男だった。ちろちろと出した舌の先端が割れており、蛇が人間になればこんな風になるのかと漠然と考える。

 異形さを見せる彼の周りには霧が立ち篭っている。いつ漂ったかは知らないが、体が濡れているのはあれが原因だろう。

 蛇男と目が合う。反らすことはできなかった。そうこうしているうちに、蛇男は霧に目を向けて何かつぶやくと、霧と一緒に瞬へ向かって動き始め……え!?

 絶句する瞬は、彼らの動きを眼で追うことしかできなかった。

 霧が体を濡らし、蛇男が一歩ずつ近づいてくる。

 目の前に来る。その手が伸びてくる。袖から大量の蛇が顔を出す。瞬は身がすくむのを自覚しているが、体は見えない鎖に絡まれたように動かない。

 静寂の中、ついに蛇男の手と蛇が瞬に触れ――なかった。

「…………え?」

 バチィ、と電撃が迸る音と光が閃く。光体が瞬の前に降り立ち、蛇男の手と蛇達に雷撃を打ったのだ。そのショックで蛇男は距離を取り、霧も瞬の周りから離れる。

 同時に硬直が解け、途切れそうになった意識が覚醒する。

 瞬はペダルに力を入れ、今持てる最大の筋力を発揮して漕ぎまくる。光体はどうしたっけと思ったが、深く考える余裕はなかったのですぐに忘れた。

 耳にはなおも這いずりの音が聞こえてくる。なぜ追って来るんだと思いつつ一目散に逃げ回り、音が聞こえなくなった時には一時間以上経っていた。

 水で濡れた体に汗が加わり、気持ち悪さとなって滴り落ちる。雨の中を一気に駆け上った気分だ。

 逃げている時は感じなかった疲れが湧き上がり、息を吸うたびに喉が痛くなる。苦しくなる一方の体を休めたいが、道で寝そべるわけにもいかず、やむなく体にムチを打って座れる場所を探し回る。

 運良く公園を見つけ、瞬はベンチに寝そべった。

 学校指定のカバンから昼食用の水筒を取り出して中身をあおり、十分に体を休める。
 しばらくして息も整うと、力なく上半身を起こした。真っ先に出てくる言葉は、なんだあれ、だった。

 よくテレビや雑誌でみるコスプレなんてもんじゃない。本当に、蛇が人間になったと言わんばかりの見事なものだった。

 次に動く霧。そもそも、朝でもないのに住宅街に霧が出ること自体おかしい。いや、ないことはないかもしれないが、まるで意志を持つかのように目標に向かって動く霧なんてのは地球上では絶対ありえない。

 はっとして、きょろきょろ周囲を忙しなく見回す。車の騒音もなく、ただただ静寂が立ち込めている。瞬はほっと一息ついた。

 落ち着いたせいか、体は揺れていることに気づく。地震ではない。

 原因は学校の制服だった。胸のポケットが震えており、何か入っていることが窺える。

 携帯電話の着信かと思いつつ、中身をつまんで目の前に持ってくる。

 意識が再び飛びかけた。

 最初に瞬の日常を乖離させた光体がそこにいた。光体は徐々に光を弱め、やがて完全に光を消し去る。そこまできて初めて、光体がどのような姿をしているかを認識できた。

 それは十代半ばに差し掛かると少女の姿をしていた。

 おでこを出した長い金髪に垂れた琥珀色の双眸。童顔だが、華奢で出るところの出た体躯は幼さよりも女の印象を強く意識させる。

 一見すれば清潔な白い衣を着た外人の女の子を彷彿とさせる。が、尖った耳と身長十五センチ弱の体、透明な翼が外人どころか人でないことを表している。

 もちろん人形ではない。人形は息をしないし体温もないし、人肌としか思えない柔らかい感触を持っていないのだ。まるで、昔見た絵本に載っていた妖精だ。

 常識を覆す出来事の連続に、瞬の思考回路はスパークして煙を上げた。

 オーバーヒートする寸前、妖精がぎゅうっと力の限り抱きつき、何か喋りかけてくる。けど悲しいかな言語がさっぱり理解できない。

 言語が通じずともジェスチャーすればわかる、と言いたいのか身振り手振りで感謝の意? のようなものを示している。その必死な様子に、何故か笑みが浮かんだ。

「そういえば、言ってなかったな。助けてくれて、ありがとう」

 不思議だった。彼女を見ていると本当に何故だか知らないが心が安らぐ。瞬が望む平穏が体現したかのようだ。

 瞬の言葉と共に妖精の頭を撫でる。無論、力は極力抑えて、だ。妖精はきょとんとした顔を作るが、それも一瞬のこと、すぐに笑顔で返してくれた。言葉は理解できずとも、二人は態度で分かり合えたのだ。

 思いもよらぬリラックスを受けた瞬は、とりあえず家に帰るか、とこれからの行動を決める。くいくい服を引っ張ってくるそれを、操られるような動きで再びポケットにしまい、のろのろと自宅へ自転車を走らせた。

 自宅のアパートに帰って布団に身を投げ出したところまでは覚えているが、そこから先は覚えておらず、意識はすでに眠りの世界へ旅立っていた。







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Author:鳩
ついにブログ開設です。
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最近はジャンル問わずの投稿小説サイトであるArcadiaや、東方SSサイトの大御所、Coolier-クーリエ-東方創想話で「鳩」名義で活動中。森近霖之助を主役に書いてます。
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