pixivにSS投稿しました

と言ってもブログでも一応公開をば。
どちらかで変わるわけではないので、お好きなほうからどうぞです。

http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6062108

ブログからの方は続きを読むからどうぞ。


 細流が緩やかに溢れる河に、一人の釣り糸を垂らす男がいた。
 ショートボブの銀髪を体ごと揺らす、大陸系の衣装を施した大柄な青年。
 彼の傍には体躯に見合う大きな笊が控えているが、その中身は空白。つまり釣果なしという有り様だった。

(釣果はないが、こうして静かに河の流れる音や魚の跳ねる音に耳を澄ませるのも悪くない時間だ)

 たしかなまんぞくといった具合に顔を綻ばせる男、名は森近霖之助。
 釣聖の名を頂戴するには遠く叶わぬ夢であるが、本来の太公望には近づいているようだ。
 だがそんな平穏に過ごす男を崩す相手が居た。

「あー、冷たくって気持ちいいー」

 霖之助が音源に声を向ければ、そこに居るのは白い肌を惜しげも無く晒すほどスカートをたくしあげた黒髪の少女の姿。
 従来のものと違う脇の出る独特の巫女服のスカートからのぞく足を河に浸し、その心地良さに浸る少女の名は幻想郷に座する博麗神社の巫女、博麗霊夢だ。
 釣りをする霖之助の上流でわざわざやっている辺り良い性格をしている、と彼は思った。
 霖之助はそんな霊夢を窘める。

「こら、魚が逃げてしまうから大人しくしていなさい」
「魚欲しかった? だったら最初から言えばいいのに」

 霊夢はそう言って、どこからともなく取り出したお祓い棒を振るった。
 少女の華奢な体から繰り出されているとは思えない鋭さを持った棒が河へ打ち込まれるたび、魚が川から打ち上げられる。
 加えて霖之助の笊に入れる芸達者なやり方だった。
  
「熊か!」

 熊よりよほど怖いけど、と小さく付け足す霖之助。

「私はそんなに美味しくないわよ」

 言いながら霊夢は河から上がる。
 それは熊肉と自分を比べての発言だとは思うが、それ以前に熊を食すものとして認識している少女が怖かった。
 味に言及しているのを聞くと、実際に食べたことがあるのだろう。霖之助は特に上手い切り返しが浮かばず、無言を貫く。

「霖之助さん、それで足りる?」
「あーいや、君が取ったものだし霊夢が全部食べるといい」
「食べないの? 私一人でこんなに食べきれるかしら……」
「持ち帰って夕飯の足しにでもすればいいさ」

 台詞から察するに、霊夢はまったく釣れない霖之助の分まで取ってくれていたらしい。
 笊の中に入っているのは小ぶりとも大ぶりとも言えない、程よい大きなの魚が五匹。
 十代の少女が一食で食べるには確かに過剰かもしれない。

「霖之助さんは?」
「子供に養ってもらうほど落ちぶれちゃいないからね。もう少し頑張ってみるさ」

 本当は魚を釣る気はなかったが、流石に目の前でああも簡単に用意されては男のなけなしのプライドが刺激されたようだ。
 意気込む霖之助は、気迫を最大限に込めて竿を振るった。


 
 持ち込んでいた調味料などを駆使し、霖之助と霊夢は時間的には昼食となる下処理を施した焼き魚を堪能する。
 魚を食べる霊夢の表情は、幸せ一杯な様子の笑顔だ。

「んま~」
「野性味溢れる巫女だなあ」

 呆れる霖之助だが、釣果を考えると強くは言えなかった。――察しの通り、釣果はゼロである。
 霊夢はすでに二匹目を平らげ、三匹目を焼いている途中である。
 
「あ~ら草食系な道具屋さんには目の毒だったかしらぁん」

 対面に座っていた霊夢は立ち上がり、わざわざ隣に座ってうりうりと霖之助の頬をつつく。
 無視する霖之助に、霊夢は軽く息をつき焼きあがった三匹目の差し出した。

「はい、あ~ん」
「…………」
「んもう、意地張ってないで食べなさい。私のおごりよ」

 あくまで抵抗を示す霖之助に、霊夢は背中から抱きつくように手を回し青年の口へ焼き魚の串を突っ込む。
 ややあって、霖之助は諦めた。

「……ツケは減らさないからな」
「おごりって言ったじゃなーい」

 観念しながら焼き魚をもしゃもしゃと食べる霖之助。その様子を見て、霊夢はにっこりと満足げに笑みを浮かべた。 
 どうやら霖之助は釣りの腕でも霊夢に負けたようだ。

「それとも、私を娶ってみる? そうすれば、おごりじゃなくて当たり前のように用意してあげるわよ」
「……そういうのは簡単に言わないほうがいいよ」
「真面目に考えなくてもいいわよ。その気がないんだってよく知ってるもん」
 
 心を見透かされているようでぐうの音も出ない。
 完敗し、観念した霖之助は黙って魚の味を噛みしめる。上手いのが悔しい。

「骨が刺さった」
「ほら口開けて」

 流石に丸かじりの弊害はあったようで、霊夢が唸り声を上げる。
 霖之助はようやくお返しが出来そうだと思いつつ、道具袋から取り出したピンセットを使い、霊夢の口から骨を取ってやるのだった。

<了>

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

鳩

Author:鳩
ついにブログ開設です。
オリジナル小説のほか、東方projectのSSを主に書いています。
最近はジャンル問わずの投稿小説サイトであるArcadiaや、東方SSサイトの大御所、Coolier-クーリエ-東方創想話で「鳩」名義で活動中。森近霖之助を主役に書いてます。
リンクはフリーです。
何か連絡があればこちらへどうぞ
noblenova☆gmail.com←☆を@に変えて送信お願いします。
バナーは目次の中にあります。

web拍手

      ↑
  お礼画像はこちらです。
  画像提供:会帆
東方・森近霖之助<いらっしゃい。折角だから、訪問記録をつけさせてもらうよ。


上記絵文字提供:うるち

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード