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神の中座で世を識(さと)る



 恋という単語を聞いて思い起こすものとは何だろうか?
 何の意図もなく考えるのなら、男女間における思慕の情、つまりは恋慕のことを示す。
 古くから伝えられる意味で示せば、尊敬・憧憬といった憧れの感情を指す。
 これらを踏まえ、魔理沙のマスタースパークを照らし合わせてみればどうだろう? 
 彼女は男勝りな性格や口調と裏腹に、乙女で純真な部分も持ち合わせている。
 とはいえ、幻想郷特有の戦闘方法であるスペルカードバトルで「恋」の単語を使う、その意味を考えたことはあるだろうか?
 魔理沙お得意の星の弾幕につけても構わないのではないか。なぜ、彼女のスペルカードの代名詞、マスタースパークに恋符という単語をつけたのだろうか?
 魔理沙本人に聞けばひねくれて返し、正確な答えは得られないだろう。元より直接問いただす気はないのだが。
 僕の考えた恋という文字における単語の意味の新説は、こうだ。
 ――自分のことを知ってもらいたいという、単純で簡単な、けれど純真な願いなのではないか――

 ここ数年前……スペルカードルールが普及される以前、霧雨魔理沙の名は人里でしか通用しなかった。
 当然だ。当時の魔理沙は人里に住む普通の人間で、魔法使いですらなかった。
 けれど、弾幕ごっこにおける魔理沙の偉業……単なる人間の身でありながら異変を解決し、努力と修行を繰り返し良い意味でも悪い意味でもその名を幻想郷に広めた。
 弾幕はパワー、と評するようにただ巨大でただ純粋なエネルギーの奔流をぶつけるマスタースパーク。その派手な外見と力強さは否応なく人目を惹きつける。結果、その技の使い手である魔理沙に注目する。
 実家を飛び出し、その身一つでのし上がった魔理沙。
 誰にも縛られぬ、自由な身の上だったといえ当時の彼女は無名で力のない、空っぽの器だった。
 けれど、彼女は器を満たし魔法使い霧雨魔理沙になった。自称ではなく、誰もが認める普通の魔法使いとなったのだ。
 そんな風に、自己とは他者との触れ合いによって生まれる。
 一人では感情も育たず、そもそもその意味を知ることさえない。恋という意味すら知らないはずだ。
 古明地こいし。心を閉ざした妖怪少女。
 環境によって作り出された虚無を持つ、空っぽの心の持ち主。
 だが、こいしには心を閉ざす前も、閉ざしてからも、空ろな器に中身を注ぐ存在がいる。
 果たして彼女は、その器に注がれているものに気づいているだろうか?
 そのことを、理解させてやろう。
 僕のために。
 友人のために。
 そして他ならぬこいし自身のために――――――――
 






 カランカラン。

「霖ちゃーん、いるー……あれ、お姉ちゃん?」

 来店した少女、こいしは目に入った人物……僕と談笑するさとりを見て目を瞬かせた。

「どうしたのこいし、私がここにいるのがそんなにおかしい?」
「だって、お姉ちゃんが地底から出るなんてねぇ。別に美味しいものを食べに来てるわけでもないんでしょ?」
「友達に会いに来るのは、別に普通よ。森近だって一度地霊殿に来ているしね」
「一度、というところを強調してくるね」
「だってあれ以来、先日こいしが連れてくるまで来なかったでしょう?」
「地底に軽々しく赴くのはやめたほうが良いと思ってね。必要とあらば行くし、話だけなら僕らの場合はいつでも出来る」
「そうだけど、やっぱり直接話したほうが楽しいわ」

 僕とさとりの会話が進むに連れて、こいしは口を尖らせるように唇を突き出している。
 ここまでは予想通り。若干ではあるが、機嫌を損ねているようだ。
 会話に入れずおざなりにされれば、当然とも言えるが。

「こいし、昨日の件だけど……結構な値打ちものだ。汚れも拭き取っておいたが…………」
「いい。霖ちゃんにあげる」
「いいのか?」
「別に……」
「もらえるならもらっておけばいいじゃない。無理に返すとこいしの機嫌を損ねるわよ?」

 すでに損ねているんだけどな。
 さとりがこいしの台詞を遮ったことで、ますますアヒル口だ。

「そういえばお茶請けも出してなかったな。こいしは何がいい?」
「え…………」
「私と同じで構わないわ。好き嫌いは特にないし」
「わかった。少し待っていてくれ」

 そう言って僕はお勝手へ向かう。さとりの好みは知っているので、聞かずともわかる。
 けど、戻ってきたときにはこいしとさとりがやや声を荒げて話していた。といっても、こいしが一方的にまくし立てているようだが。

「なんで? お姉ちゃん霖ちゃんに何も頼んでないよね。どうしてわかるの?」
「付き合いが続けば、自然と覚えるものよ。おかしいことじゃないわ」
「…………本当に、友達なんだね」
「何を今更。前から言ってるじゃない」

 さとり、計画通りといえちょっと声がきつくないか?
 とは言えず、僕は姉妹の間を取り持ってお菓子を渡す。
 口で相手を追い詰めるのはさとりの得意とすることだから、これが「仕事口調」なのかもしれない。とすると、少し珍しい機会なのかもしれないな。
 そう思っていると、さとりからジト目で睨まれる。はいはい、今は無駄なことは考えないようにするよ。

「こいし、不機嫌そうだけどどうかしたのか?」
「……別に」
「季節的に暑くて思考が曖昧になってるの?」
「そうなのか。なら冷たいものでも」
「ううん、そうじゃないの」
「冷たいと言えば思い出すわね。通信越しじゃない、実際の雪見酒」
「寒いのは苦手なのに、さとりが無理を言ったんだっけ。あれは寒かった」

 と、こいしには通じない会話を展開していく。
 重要なのは、さとりが心を読んでいても僕が全く気にしていない風に見せること。
 今でこそ慣れたが、心を読んだ会話の跳躍における話というのは頭の回転が要求される。言ったことに対する返答、その二つも三つも先を予測して口を開かなければならないのだ。
 けれど僕にとってそれは面倒だが苦痛ではない。僕ならできる。僕だからこそ出来るのだ。
 雑談の中で気を配るのは、決してこいしを無視しないことだ。ただ、こいしにはわからない会話を交えることで、彼女の中に少しの不満と疑問の感情を芽生えさせればそれでいい。
 その日は僕とさとりにとっては普通であったが、こいしにとっては奇妙と言える時間が経過した。さとりがこいしと一緒に地霊殿へ帰るさい、僕はこいしにまた明日来るように言った。
 お姉ちゃんは? と首を傾げるこいしにさとりは明日は来れないと告げる。心なし、そう言ったときのこいしの表情がほっとしたように見えたのは、多分気のせいではない。

「じゃあ霖ちゃん、また明日来るね」
「ああ。またおいで」

 一つ目の布石は打った。
 さとりだからこそ今日は心配なかったが、果たして明日はどうなるか……
 なるようにしかならないとはわかっているが、予想されるべき内容は常に頭に浮かべておかないとな。
 懸念事項を抱えたまま、僕らの悪巧みの一日目がこれで終わった。




 ――カランカランカラン。

「霖之助さん、居るかしら?」
「霊夢か。いらっしゃい」

 昼を迎える前にやってきたのは霊夢だった。
 いつも特に用事はないのに香霖堂に訪れる霊夢だが、今日はちゃんとした予定がある。

「ほら、夏用の巫女服だ。春用より生地が薄いから、少しは暑さも和らぐだろう」
「ありがとう。ツケておいてね」
「何年その台詞を使えばいいんだか」
「お金が溜まったら返すわよ」

 これも同じだ。全く、次代の巫女あたりに請求するしかないのか。
 考えている傍から、霊夢はお勝手にあった茶葉を取って用意を始めている。あれは新茶で高価なものだ。相変わらず選ばずとも良いのを取るな、羨ましい直感だ。

「霖之助さん、強盗でもした?」

 それは君たちのことじゃないのか? という言葉は言っても意味がないので飲み込んだ。
 霊夢は店を見ていない。視線は、僕が座る勘定台の近くの棚に置いてあるピアスに定められていた。

「いきなり何を言うんだ」
「そのピアス、結構執念深い霊魂が憑いてるのよ。気配的に、奪われて未練を残したまま死んだって感じね」

 服の中からお札を取り出し、曰く憑きのピアスにぺたりと張る霊夢。完了~と口ずさみ、残してあったお茶を一気に飲み干した。 
 以前、霊魂を視認できるような素振りを見せていたが、そういうこともわかるのか。

「巫女的にそれで良いのか? 相手の言い分とか聞く必要あるんじゃ……」
「そんなのいちいち気にしてられないわ」

 本当、この巫女は……

「あれ、殺掠品よ? 霖之助さんの能力じゃ、そういった類の遺品はわからなかったかしら」
「なら、埋葬してやるべきかな」
「否定しないのね」

 相変わらず勘が良い。さとりや紫とは違う意味で嘘がつけない相手だ。
 あのピアスは、ある少女が持ち込んだものだ。僕とさとりがピアスによる通信を行っていると知り、自分も試してみたくなったそうだ。
 僕はそれに対し、材料がないので改造は出来ないと伝えると、彼女はつまらなそうにしてピアスを置いて帰っていった。
 その少女は、今後も僕と顔を合わせる間柄だ。そのため、そのような入手方法を取る彼女をどう扱ったものかと頭を悩ませている。

「困ってる?」
「ああ、困ってる。けど霊夢が普段解決するような異変と違うから、扱いが難しいな」
「意外ね。他人の苦労を背負うなんて、らしくないじゃない」
「自分と友情のため、ともっともらしく言っておくよ」
「…………それって、地霊殿の主のこと?」

 霊夢の声質が変わった……気がした。気のせいか? 

「ああ。さとりの妹のこいしを知っているか?」
「ええ。以前の異変で守谷神社に行ったとき、いきなり喧嘩吹っかけられたわ。あいつがどうかした?」
「あとで店に遊びに来るんだ。どう対処しようかと悩んでいてね」
「遊びに? 何やらかしたのよ」
「ペットになって欲しいと言われてね。もちろん断ったが、興味を持たれてしまったようだ」
「何なら追い出すけど?」
「別に、霊夢が気にする必要はない。そうだな、店で暴れないようにしてもらえればそれでいい」
「さとりにでも頼まれた?」

 やけに質問が多い。憩いの場に異分子が混じるのをよしとしないせいかもしれない。本当、身勝手な連中だ。ここは僕の店だと言うのに。

「どうした、やけに絡むな」
「あの道具持ってきたの、あいつでしょ。下手に刺激したら、霖之助さん殺されるんじゃないかと思って」
「断定ときたか。……まあ正解だけど。こいしは子供だし、ちゃんと幻想郷のルールを覚えればあんな無意味なことはしないはずさ」
「面倒なことするわね。倒せば終わりなのに」
「極論すぎる。確かに君は妖怪退治を生業としているが、所詮は弾幕ごっこ。殺し合いをするほどじゃないだろう? 何のためのスペルカードルールなんだ」
「殺掠とそれは無関係よ。言っておくけどルールを外れた妖怪がいたら、霖之助さんのお願いでも無理ね」

 それはつまり、必要とあらば滅ぼされるかもしれないから覚悟をしておけということ。
 言葉は続けなかったが、そういうことだろう。
 霊夢は心のしがらみに捕らわれない。こういう問題は紫のような妖怪が処理してくれるかもしれないが、自分の手も必要と判断すれば、己の手も汚すことすらあるだろう。
 ……僕の身勝手な世話かもしれないが、霊夢にそんなことはさせたくない。今の幻想郷でそんなことをする必要はないのだ。
 けれど、ルールを外れた者は処分しなければならない。それは法であり秩序であり、幻想郷を守ることに繋がるからだ。
 だからこそ、僕はこいしと友好を結んで彼女の内に潜むものを抑えようと思っている。
 それに、もしもこいしが滅ぼされることになれば家族想いのさとりが黙っていないだろう。仮にその場が収まったとしても、確実に遺恨が残る。それこそ、今の幻想郷の平穏が崩れる一因を生んでしまうかもしれない。
 ひょっとしたら、そんなに大事にもならないかもしれない。けど、予想できる以上は打てる手を打ったほうが良い。

「肝に銘じておくよ」
「で、こいしはいつ来るの?」
「さあ。今日中には来ると思うが…………」
「そう」

 言うだけ言って、その場から動く様子を見せない霊夢。つまり、この場にいるということだ。

「弾幕ごっこに留めておいてくれ」
「私が仕事するかどうかは向こう次第ね」

 やれやれ、店ではそういったのはご法度なんだが。
 こいしは霊夢に会って早々弾幕勝負を仕掛けたと言うし、会って何もないなんてありえないだろう。
 力を高めるのは妖怪の本分だろうが、出すぎる杭は打たれるのが幻想郷。霊夢で止めておいて、紫辺りに目をつけられなければいいが……
 僕の懸念をよそに、昼食を取った後にこいしは店にやってきた。
 入ってきて霊夢を見るなり、こいしは嬉しそうな笑みを浮かべた。

「貴方、あの時の巫女じゃない! どうしたの? もしかして、私に会いに?」
「んなわけあるか。ここは博麗神社の分社なの」

 勝手に人の店を別荘扱いするな。

「それより、貴方と会えたのは幸運だったわ。こないだの続きやりましょ」

 霊夢が僕を見る。ため息をつきながら、僕はうなずいた。

「あー、昨日みたいにわたしをのけ者にしないでよ」
「したつもりはないよ。気のせいだ」

 ただ参加できない話が多かっただけだ。
 口を尖らせるこいしをよそに、霊夢が湯のみを僕に預けてくる。

「今日は?」

 僕は言いながら指を一つ立てる。霊夢はそれを見て頷いた。 

「わかった」

 二、三のやり取りを交わす僕と霊夢を興味深そうに見るこいし。僕は何も言わなかったが、霊夢が怪訝そうにこいしに尋ねた。

「どしたの? 不思議そうな顔して」
「今の会話でやりたいことわかるなんて……どっちか、心でも読めるの?」
「慣れよ、慣れ」

 ちなみに今のは、弾幕ごっこにかける時間を示している。指一本なら十分以内に決着をつけるという意味だ。

「そうだね。別に心を読まずとも、付き合いを続ければ嫌でもわかる。魔理沙や霊夢は昔から行動が変わらないしね」
「そういう霖之助さんも全く変わらないわ」

 首を傾げていたこいしだったが、霊夢が外に出て行くので慌てて後ろを追いかけていく。
 やがて楽しそうなこいしの声や、怠惰を隠そうとしない霊夢の声が聞こえてくる。
 十分もすれば決着が着く。この暑い中熱いお茶を好んで飲むのは霊夢くらいだと言うのに、準備する身のことも考えて欲しいものだ。
 予定より早く決着はついた。
 勝ったのは予想通り霊夢。いや、よく見れば霊夢もスカートが破られて強制的にスリットの切れ込みを入れられている。弾幕に当たったのか……珍しいな。不機嫌そうな霊夢と対照的にこいしは満面の笑みだ。
 僕はちょうど淹れたてのお茶を霊夢に渡しながら言う。

「霊夢、こいしの服を修繕するからその間着替えをさせてやってくれ」
「随分とサービスいいわね」
「こいし、脱いだ服は適当に置いてくれ」
「え、霖ちゃん服縫えるの?」
「霊夢の服を作ったりもしている。その辺の職人よりは扱いに慣れていると思ってくれて構わない」
「すっごーい! 今度私のも作ってよ!」
「オーダーメイドは受け付けてない」
「えこひいきー!」
「万人受けする香霖堂なんて香霖堂じゃないわ」

 ぶーぶー文句を垂れるこいしを引っ張りながら、霊夢は奥へ引っ込んでいく。
 僕が針と糸を持ってくる間に、座っていた椅子にこいしの上着とスカートがかけられていた。……あの場で脱いだのか? 小さいころの魔理沙じゃあるまいし、人並の羞恥心くらいは持ち合わせて欲しいものだ。
 眉間にシワを刻んでいると、奥のほうから僕の予備の服を着た霊夢と体をシーツで巻いた簡易ワンピース姿のこいしが慌しく店に現れる。待て、なんで霊夢が着ている。霊夢の巫女服はスカートがスリット加工になっただけで服を全部着替えるほどじゃなかったはずだが。

「逆じゃないか?」
「なんで私がこいつに遠慮しなきゃいけないのよ。私の服を先に直すのが義理人情ってもんでしょ?」
「随分と縁遠い言葉が聞こえたな」

 問答無用で自分の服を渡す霊夢。僕は肩をすくめながらそれを受け取り、スカート部分の裁縫に入った。

「とか言いつつ手を動かしててすごいね。職人芸ってやつ?」
「慣れれば大抵の人が身につけられる技能だよ。あとこいし、そこに妖怪用の傷薬があるから、それを打ち身の箇所に塗っておくといい」
「わぁ、ありがとー!」

 昨日、こいしに疎外感を与えた手前不機嫌状態で接する必要があると思ったが、霊夢のおかげでそうならずにすみそうだ。
 近すぎず遠すぎずという心の距離を維持する必要があるので、こうやってこいしに注意を向けることを忘れてはいけない。
 完全に興味を無くされる前に悪巧みを終わらせないとな。
 僕とさとりが考えた悪巧みとは、こいしの感情の隙間を生み出すことだった。
 仲間外れになったように錯覚させると言い換えても良い。僕がつけこむのは、その隙なのだから。
 こいしはその能力ゆえ、誰の目にも移らず気配すら察せない。自分から姿を現してもらわなければ、見ることも話すことも適わない。
 ようは僕たちはこいしを怒らせて、もっとわたしに構え、と癇癪を起こすのを待っているのだ。
 感情の爆発は危険を伴うが、逃げ続けているこいしには良い刺激だと僕は思っている。
 他人を知るのが怖い。
 そんなの、当然の感情だ。
 相手を知ろうとせず、感情のままに付き合えば必ず綻びが出る。
 霊夢は真の無意識でそれをしているが、こいしのそれは意識的無意識……そうあろうとして行っている無意識の行動に過ぎない。
 変わろうと思い、それに向かって動くのならば妖怪も変わる。
 現にこいしほどひどくないが、人間関係に奥手だったさとりは一歩踏み出した。
 心を読まない状態で歩み寄ったこともあるが、さとりもそれに逃げずに応えてくれたおかげだ。その甲斐あって、心を読まれるような距離で触れ合うようになってからも友人関係が続いている。
 こいしも同じ条件だ。受け入れる準備はずっと前から整っている。後はこいしがそれに気づくかどうか。
 強要するわけじゃない、自分から歩み寄る姿勢こそが大事なのである。
 こんな風に策を弄している手前どの口がほざくという意見もあるだろうが、そこから先は僕には関係ない。
 僕はあくまで、こいしの感情を発生させる誘発剤でしかない。手に取るのは僕のような赤の他人でなく、心から彼女を案ずる家族にしてもらえばいい。
 憎まれ役は買ってやる。そこから成長してくれれば僕の役割は終わりだ。

「まったく霖之助さんも災難ね。厄介なのに居座られて」

 今は助かっているが、過去、或いは未来形で言わせてもらえば霊夢も厄介な部類に入る……などと口にはしない。

「む。厄介ってどーゆーこと?」
「あら、言わなきゃわからない?」

 何だ、空気がおかしくなってきた気が……

「聞く限り、心を読む第三の目を閉じたそうじゃない。逃げる行為を間違ってる、なんて言わないけど見てくれる人をないがしろにするのは間違ってるって言わせてもらうわ。地霊殿の厄介者一家はあんたを心配してるし、関わりの薄い霖之助さんにも骨を折らせてる。ほら、こんな面倒な子を厄介と言わずに何て言うの?」
「霊夢。何を…………」
「あんたのしてることは、子供の駄々と同じよ。自分からは何もせずに他人から与えられてようやく目を向けて……心を読んでみんなが怖くなった? 人間妖怪問わず誰でも怖いモンよ。あんたは悲劇に酔ってるだけのガキだわ」

 なんだ? どういうことだ?
 どうして霊夢はこんな喧嘩腰にこいしを責めているんだ?
 訳もわからず呆然とする僕をよそに、霊夢は言うだけ言ってお茶を飲み干し立ち上がった。

「霖之助さん、もう服の修繕終わったわよね?
「あ、ああ。破れてたのは生地の浅い部分だから、もう直ってるが…………」
「そ。ありがと、それじゃ着替え直してくるわ」

 僕の手からスカートを取って霊夢は奥のほうへ上がった。
 こいしを見れば、俯いて何かぶつぶつつぶやいている。僕はフォローのために何か言おうとするが、上手い言葉が見当たらず口を濁してしまった。
 ややあって霊夢はいつもの巫女服に着替えて出てきた。ご馳走様、と僕に言って次いでこいしに向いて一言。

「じゃあね、臆病者」

 なんだ。何が起きている? 
 殺掠のことで怒っているのか? 
 それにしては、いつもより攻撃的だ。妖怪のいざこざなんて、霊夢にとってはそう珍しいものでもあるまいに……
 僕は何も言うことが出来ず、扉が閉まるまで霊夢を目で追うことしかできなかった。
 ……その後姿を追っていたのもしばし、僕はこいしの方に振り向いた。
 彼女はまだ隣に座っている。僕は思わずこいしの手を握った。

「……………………霖ちゃん?」

 顔を上げ、きょとんとした顔を見せるこいし。……何も、ないようだな。

「多分、服を破られたことで怒っていたんだと思う。弾幕ごっこでの結果なんだから、後に引きずらなくても良いのに。すまないが、もう少し待っていてくれ」

 そっとこいしから手を離し、僕は服の修繕作業を続けた。
 今までと異なったのは、こいしは無言になったこと。
 悪巧みが失敗……いやある意味成功はしているが、どうしたものかと思案していた僕は注意力が散漫になっており、こいしが僕を見ていたことに気づかず服に糸を通し続けていた。







「…………どこだ、ここ」

 木に囲まれた小さな空間の中心で、きょろきょろと周囲を見回している人間がつぶやいた。
 年のころは初老を迎えており、やや肥満ぎみで脂ぎった体躯は豊かな食生活を送ってきたであろうことが推測される。
 やがて首を回すのに疲れたのか、人間はずり足気味に移動を始めた。速度は徒歩よりも遅く、この人間の性格は警戒心が強い或いは臆病とも取れる。

「なんてキレイで真っ赤な花だ…………なんだか、癒されるな」

 歩いた先に、異形な真紅の花々を見つけた人間がその美しさに目を奪われて足を止める。
 だが時間が経つに連れて、不快感と活力を漲らせる複雑な表情を作っていく。人間自身にも、何が起きているのか把握しかねている状況のようだ。

「なんだろうな。生きる気力が沸いてきた気がする……はは、人目につかずに死にに来たのに、思い直すとは思わなかった」

 つぶやきは、人間が自殺志願者だったことを知らせる。人間自身も、自らの現状に戸惑っているようだが、体を反転し元の場所へ戻ろうとするその姿からは、生命力が感じられた。
 やがて道を引き返す人間であったが、道の行く先に何者かを見つけて足を止めた。

「君、こんなところでどうした?」

 気分が良かったからなのか、先ほどまでの慎重な移動から察する性格とは裏腹に穏やかに声をかける。 
 少女は明るい黄色の上着をはおり、アクセサリーなのか紐を通した何かを服の上にくくりつけている。深緑色のスカートから覗く白い足に思わず視線を下げて観察していたが、しばし経ってからようやく顔を上げた。
 その人物は少女だった。まだ幼く、成人すらしていない。今の若者には珍しくお洒落な帽子をかぶっており、どこか良家のお嬢様かと疑ってしまう。
 人間が声をかけたにも関わらず、少女の視線は彼を見ていなかった。
 いや、見てはいた。
 ただ目線は彼そのものではなく、身につけた腕時計に固定されている。思わず、人間は腕時計を押さえて後ずさった。

「な、なんだい君は」
「ねえおじさん、それってなぁに?」

 可愛らしい声が腕時計に対して疑問をぶつける。時計くらいなら現代を生きている中で誰しもが持っているだろうに、と思ったが人間はそのことを口に出さず、少女の質問に答えた。

「これは、離婚した妻と娘からもらったプレゼントでね……家も家族も職も失ったしまった身だったけど、これだけはなんとか持ち出してきたんだ」
「へぇ~……ちょっとちょうだい」
「あ、おい…………き」

 み、と続くはずだった言葉が永久に紡がれることはなかった。
 少女が人間の顔に手をかざしたと思うと、掌から輝く光弾のようなものが発射されたのだ。
 間を置かず響くのは、肉が潰れ液体が下に落ちた水滴の音。
 少女は音を気にせず人間……いや、死体の腕を取り巻きついていた銀細工の鎖を千切る。その拍子に鎖の破片がいくつか地面に落ち、赤い水溜りの中に沈んでいった。

「んー……ちょっと汚れちゃってる。価値、下がるかなぁ」

 腕時計全体の色を示していた白銀は一部が赤く、にごった黒に染められ美しさを損なわせていた。少女はそれが気に入らないようで、眉間にしわを寄せて不機嫌さを体で表していた。

「そだ、霖ちゃんに聞けばいっか」

 腕時計を持ったまま、少女はふわりと浮かび上がる。
 骸と花は何も答えない。花々は優しく深紅を彩り、風に揺らめくだけだった。







 僕はこいしから渡された、血塗れた銀細工の腕時計の汚れを拭き取りながら、ぼんやりと無縁塚の方向を眺めていた。
 店内は夕闇の色に包まれており、僕の気分もまた秋から冬に変わる風のように冷えている。
 香霖堂に戻ってきたこいしは、携えていた腕時計を僕に見せて鑑定して欲しいと頼んできた。最初こそ道具屋として引き受けた僕だったが、渡された道具の現状を見て顔をしかめた。
 こいしには明日、同じ時間に来るようにと指示してすでに帰らせた。僕はと言えば、その後すぐ無縁塚に赴いて再思の道付近に転がっていた首なしの遺体を火葬した。死体を食らう妖怪を出さないための処理である。
 彼岸花に包まれるようにして倒れていた体は、死の色をより一層赤く染め上げていた。ひょっとしたら、彼の花が鮮烈に美しい色彩を保っているのは、周囲で死んでいった人間を色で示しているからかもしれない。
 妖怪にとって人間の死は等しく愛でられるものだ。食料であったり、生き様を尊ぶ彼らからしてみれば美しさを感じるものであったり、様々な解釈こそあれ妖怪は人間の死に興味を持っている。
 だが、こいしから渡された時計の記憶を覗かせてもらうと、それらの意味を無くしていることを知ってしまう。無意味さをよりいっそう際立ててしまう。
 恋焦がれるような殺掠をしたい、とこいし本人の口から聞いたことがある。
 妖怪の本分としての性がその言葉を言わせているのだろうが、今回に限って言えば全くの無意味だと僕は思う。
 殺されたのは単なる自殺志願者。殺したのはこの腕時計に惹かれたから。
 殺すほうも、殺されたほうも何ら意味がない。
 殺された人間は妖怪の食料となって糧になるわけでもない。殺した妖怪は時間の経過とともに忘れてしまう、一時の興味のために腕時計を欲しただけだ。
 言ってはなんだが、僕は別に憤っているわけではない。外の世界の人間である外来人が幻想郷にやってきた時点で、選択肢はすでに狭められている。
 妖怪の食料になるか、自力あるいは手を借りて帰還するか。ここに住む選択もあるかもしれないが、そこは僕の範囲ではない。
 僕が感じているのは悲しみでもない。ただ、無意味なことをしたこいしの行動理由が気になっただけだ。
 おそらくこいしに聞けば、この腕時計が欲しかっただけと返ってくるだろう。事実、そうした理由で人間を殺しこの腕時計を奪った。
 昔ならともかく、今の幻想郷で無用な殺しはご法度だ。さっきは仏を埋葬するべくこいしを帰したが、今思い返せば店で待ってもらっていたほうが良かったかもしれない。
 今はまだともかく、この状況が続けば霊夢あるいは紫が動く。そうなればこいしは妖怪として退治されるだろう。
 ただでさえ地上と地底の間には緊張があるのに、これ以上の刺激は勘弁である。

「とは言っても、霊夢がすでに刺激しているしなぁ……」

 さとりとの悪巧みも、効果がなければ意味がない。
 こいし自身、まだ多少の良識はあるようだから解決にはその部分にかけるしかない。

「気になるのは、あの夢か…………」

 こいしと初めてあった時に見た夢。
 泣いている少女と、僕を縛る少女の夢。
 あれがもし、こいしの閉ざされた精神と今表に出ているこいしの精神だと考えたら、一応の辻褄は合う。
 何はともあれ、明日のこいしの到着を待つしかないな。
 これからのことを考えながら、僕はさとりに一通りの報告を入れるとお新香を齧って酒を摘みその日の夜を迎えた。
 








「…………ままならないものね」

 私は森近からの連絡を受け、地上でこいしを探していた。
 霊夢と一悶着あり、こいしは香霖堂から出て行ったそうだ。詳しく追求しても、森近本人にも霊夢の意図が読めなかったらしい。いっそ私が霊夢に会ってみようかとも考えたけど、それよりこいしのほうが心配だ。普段は無意識の隙間を縫って漂うあの子が簡単に見つかるとは思えないけど、何もしないよりはずっといい。
 悪巧みはある意味成功しているとは思うけど、霊夢が追い詰めたというのなら結構洒落にならないレベルでこいしを責めたと思う。あの巫女は頭の中が空っぽで感情のままに言葉を放つ。推測も予想も何もない、ただシンプルな言の葉。だからこそ、その力は強くこいしを打ちのめしたはずだ。

「にしても、臆病者ね……随分、言ってくれるじゃない」

 胸に込みあがるものを抑え、私は夏の幻想郷の空を飛んでいく。
 それもそれで腹が立つが、何より危険なのはこいしが危険視されるということ。
 地上と地底の間にルールがあるように、幻想郷では人間と妖怪の間にもルールが作られている。
 今回、こいしはそれを無意味に破ってしまった。
 現状はまだ引き返せるレベルだと思う。逆に、これ以上増え続けるならもう引き返せない。一刻も早く見つけないと!

「なら、良い方法があるわ」
「!?」

 突然の声に、私は飛ぶのをやめてその場に浮かぶ。
 眼前で空に佇む少女が私に話しかけてきたのだ。
 私は少女――霊夢に何の用件か尋ねた。

「何のようですか? 何もなくても私には用があります。妹を傷つけておいて、ただじゃすませませんよ」
「過保護ねぇ。まるで籠の中の鳥よ? 自由意志はあっても掌の上じゃなきゃ我慢ならない?」
「…………私との『おしゃべり』をお望みですか?」
「勘弁してよ、面倒くさい。私は霖之助さんには言えないことを手助けしただけよ? あの人、案外外道な常識人に見えて身内の関係者には甘い傾向を見せるし。悪巧みなんかより、ずっと効果的じゃない」
「……………………」

 霊夢が何を考えているのか、言葉でなく心に聞くことにした。
 私は目を見開いた。貴方……!

「『私』にとってあの場所は日常の象徴なのよ。異変の解決話を話の摘みにすることはあっても、それはあくまで異変の話。血生臭い妖怪同士の理の外の話なんてお呼びじゃないわ。霖之助さんも下手に妖怪成分入っているせいで、変に理解があるしね。でもあの店にそんな殺伐としたものを持ち込まないで欲しいわ。必要以上に攻撃的な口調になったのは、事実を当然として受け入れる霖之助さんに苛立ったからよ」

 彼女はすらすらと内心を吐露していく。それは、果てしなく正解に近い回答だと感じた。

「別に理解も納得もしないわけじゃないわ。でもね、憩いの場に無粋なものを持ち込まれたから気分を害してる……そう思っているだけ。ただでさえ、あんたみたいなのも出入りしてるみたいだしね」
「何ですか? 遠まわしに、森近に近づくなってこと?」
「別にそこまで言うつもりはないわ。けど、あんた自分で気づいてる? 霖之助さんと接して、必要以上に精神に影響を受けてることを」
「それは……当然。友人同士の語らいは私の中で楽しい思い出になっています」
「誰からも好かれない恐怖の目も変わったもんね。……その想いはあんたを強くも弱くもしてる。男女におけるそれは、精神を根本から破壊する時もあるから、気をつけたほうがいいわ」
「何が言いたいのです?」
「別に。ただ、霖之助さんとキスした光景を見たくらいでうろたえる有様を可愛く思ってるだけよ」
「――――――――――」

 その言葉で、私は考えないようにしていた光景を思い出してしまう。
 雨の中。一組の男女。腰を折る青年。背伸びする少女。手を取り一つの傘の中に入る二人。触れ合う……

「ほら、動じちゃった。地霊殿の主とは思えない。ホント、可愛らしい。友情と愛情がごちゃ混ぜになって、霖之助さんをどう見ていいのかわかってないのも見てて楽しいわ」
「…………貴方!」
「はい、そんじゃ暇つぶしもここで終わらせて本題に入りましょうか」

 唐突にそんなことを言われてしまい、私は沸きあがった怒りをどこに向ければいいかわからなくなった。
 落ち着け。私はさとり。会話で遅れを取るなんてあってはならない。森近のことなんて関係ない。少なくとも、今は。

「もっと取り乱してくれたら面白いのに。……ま、良いわ。私が提示するのは、もっと面白い悪巧み。チップは高いけど、効果は見込めるかもよ?」

 私は彼女の心を読む。……なるほど、確かにその案ならベットする価値もあるかもしれない。

「そうね、そのチップ、払っても良いですよ。ただし、私の修正案も加えさせてもらいますが」
「良いの? 下手すると死ぬわよ?」
「全部が全部、貴方の企みというのは気に食いません。私も参加させていただきます」

 森近には悪いけど、黙って進めさせてもらおう。
 意趣返し、というわけではないけど以前私が痛感したような気持ちを味わうがいい!

「…………うーん、良いほうに変わってるのよねぇ」

 何か言ったようだけど、私は気にしない。
 このまま良いようにやられるのは地霊殿主としての名折れ。期待には、応えてあげるわ。
 ……森近。こいしをお願い。貴方なら……私なんかと友人になってくれた貴方なら、きっと応えてくれる。
 勝手な期待だけど、そうさせるものが貴方にはある。信じたい気持ちが私にある。
 森近はこいしの能力について興味深い解釈をしていた。それが事実であるなら――私に疑う理由はない。
 他ならぬ、こいしのために――頑張ってね?




 夜の魔法の森。
 妖怪が支配する時分で、紅白の服を着た少女が森の上を飛んでいる。
 わたしはそれを見ていた。
 じっと、見ていた。
 気づかないはずだけど、勘の良い巫女は気づいてしまうかもしれない。だからわたしはこっそり近づいた。
 あの巫女に言われてから、わたしの心は真っ白になっている。
 埋めなきゃいけない。塗らなきゃいけない。
 色を染めるのは何がいいだろう? やっぱり、恋焦がれる情熱の赤。紅白の赤。
 心のキャンバスを埋めるのに、到底色が足りない。
 足りない。
 足りないたりないタリナイ足りナイタリないたリないタりナいたりなイたりナいタリなイ。
          色
                        が 
                  足
              り
               な
                   い。
 欲しいホシイほしいホシいほしイホしいほシい。
 紅い深紅い赤い緋い真紅い血(あか)い色が。
 欲しい。
 赤は芸術だ。
 彩る絵の中で一番好き。だって人間が一番多く保有する色でしょ?
 人間で絵を描くなら、やっぱり赤が一番だ。
 みんなもそう思うでしょ?

 巫女の背にそっと近づき――まず、絵の具を取り出した。
 やっぱり赤い。水につけなくても十分、この絵の具はそのまま使える。
 何を描こうかな。
 何でもいいや。キャンパスが生まれたそれでいいや。
 そうやって私は絵を描いていく。
 描いたのは、お姉ちゃんの顔。
 ずっと昔からわたしを心配してくれたお姉ちゃん。
 面と向かっては言えないけど、大好きなお姉ちゃん。
 ……あれ? おかしいな。
 赤い絵の具で描いていたはずなのに、どうして紫の色が混じってるんだろ?
 お姉ちゃんの髪の色は確かにそうだけど、着色には混じってなかったのに。
 おかしいな。
 おかしいな。
 おかし――――――――――




 泣いている。
 少女が泣いている。
 こいしは泣いていた。
 彼女は泣いていた。
 涙を流しているのを見るのは初めてだ。
 生まれたての赤子のように。
 圧倒的な恐怖に怯える子供のように。
 世界に絶望した大人のように。こいしはただただ泣きじゃくっている。

「い、ごめん、ごめんなさい」

 鼻声な上に声が低いのでよく聞き取れないが、謝っているということはわかった。

「こいし? どうした」

「り、ちゃ、……おね……」

 嗚咽を漏らすばかりで要領を得ない。
 いったいなんだろう、と思っていると、夜闇のせいで見にくかったがこいしは誰かを背負っているようだ。

「? 布団でも貸そうか?」

 頷くこいしを連れて、僕は寝室へ案内する。
 布団に寝かせてくれたおかげで、僕はようやくその人物を認識することができた。
 
「さと……り?」

 瞼を閉じて、死んだように眠っているのは古明地さとりだった。
 僕はこいしを見やる。彼女は泣きじゃくるばかりで、一向に話をする気配がない。
 とりあえずさとりの具合を見やる。傷を負っているようだが、妖怪にとってこれは致命傷ではない。時間はかかるが、回復はするだろう。
 永遠亭に行くのが一番だが、こんな状態のこいしを一人残しておいて大丈夫か……? そんな不安もあって、僕はこの場でさとりを治療することにした。たまに弾幕ごっこで傷ついたコソ泥二人のために、ある程度の医療技術は習得済みなのである。もっとも、さとりのこの傷は簡単ではすまないが。
 不幸中の幸いだったのは、命に別状はないということだ。人間ならば重症だったかもしれないが……こういう時はさとりが妖怪であったことに感謝だ。死ぬことはないだろう。
 僕は治療を施した後、こいしの背中を撫でたり声をかけてやったりして精神を落ち着かせるよう勤めた。
 さとりがこうなった理由に彼女が関わっている、或いはこの状態のさとりを発見しただけなのかもしれないが、とにかく情報が欲しい。
 なだめた甲斐あってか、ようやく話せる程度に回復したこいしに、僕は改めて尋ねた。

「こいし、さとりは一体どうしたんだ?」
「わ……わた……わ……た…………」
「ゆっくり、落ち着いて。一つ一つ、単語単語で構わない。意志を、伝えるんだ」

 頷くこいし。
 語られた内容に、僕は渋面を作るほかなかった。

(…………どう言えばいいんだ…………)

 昼間の霊夢の意見にこいしの妖怪としての部分が刺激されたのか、彼女は霊夢を襲った。
 だが、気づけば霊夢はさとりの姿になっており、こいしは姉を殺してしまったと思い込んで精神的なショックを受けている。
 そしてさとりは、妹に傷つけられたショックで眠りから覚めない。
 まずい。非常にまずい展開だ。
 なぜ霊夢がさとりになったのかは知らないが、こいしの内にある狂気は洒落にならなくなっている。
 それこそ、処分されるレベルだ。
 何せ未遂……とは思うが、博麗の巫女をスペルカードルール外で襲ったのだ。問答無用で殺されても仕方ない。
 そうなると、永遠亭に行くのも躊躇ってしまう。さとりが傷ついた理由を正直に話せば、そこでこいしは終わりだ。
 いや、あの八雲紫ならすでに事情を察しているのかもしれない。そうなればもうおしまいだ。
 待てよ? 気づいたら霊夢がさとりになっていたとこいしは言った。
 となると、すでに気づかれている?
 霊夢を害そうとする直前に、さとりと位置を入れ替えることなどあのスキマ妖怪にとっては造作もない。
 さらに言えば、僕は今日の出来事をさとりに報告してしまっている。まだ地上に出るのを億劫としているが、妹が絡んださとりの性格上すぐに地上に上がってこいしを探したのではないか?
 地上ならば地底に干渉するという規約には反しない。子供じみた言い訳かもしれないが、そう取れることも確か。くそっ、ならこの状況には僕も一枚噛んでいるのか。
 姉を傷つけたショックで、こいしは今精神に傷を負っている。自業自得と言ってしまえばそれまでだが、それでは巻き込まれたさとりはどうなる? 家族の責任とでも言うのか?
 どうすればいい。僕は何をすればいい。
 落ち着け、優先順位を作れ。焦ったらそれだけ選択肢は狭まる。

「…………さとりの目を覚まさせよう」

 普通に起こすのは無理だ。精神的ショックで眠っているのなら、外からの刺激では無意味。ならば内からの刺激で強制的に覚醒させてもらおう。

「こいし、僕の話を聞いてくれ」

 ゆっくりと顔を上げるこいし。その顔は悲痛や悲哀、表現できる限りの悲しみが刻まれている。

「僕達は以前、同じ夢を共有した。僕の憶測に過ぎないが、君の無意識を操る程度の能力は、夢に干渉することが出来ると思う。今は理屈じゃなく、さとりを救うために試して欲しい」
「…………そんなこと、でき、るの?」
「わからない。あの現象だって、偶然起こったのかもしれない。ひょっとしたら、能力に関係ないのかもしれない。けど、僕達は今それをするしかないんだ。僕も協力する。……君が起こした結果なら、自分の力で足掻いて救ってみせろ」

 小さな両肩を掴み、僕はこいしを見据える。
 そこに浮かぶ瞳に虚無はなく、驚き、慌て、まごつきうろたえる少女の姿しかない。
 傷を掘り返す行為だが、今のこいしには必要だ。
 僕は覚悟を決めて言った。

「霊夢も言っただろう? 君は悲しんでいる。そこから動けないのなら、君は悲劇に酔った子供だ。……全てうまくいく保障はない。けど、逃げているだけでは何も出来ない。なら、動いてみないか?」

 こいしは何も言わない。僕もこれ以上何か言うつもりはない。
 伝えるべきことは霊夢が全て言った。逃げるか、進むかはこいし次第だ。


 どれほどの時間が経ったか。
 肩を支えた姿勢のまま、ずっと僕達は硬直している。
 あとどれほど続くのだろうか……そう思った時。
 こいしは小さく、弱弱しく、けれど確実に……頷いたのだった。
 





「僕はこいしがどうやって能力を使うかはわからない。協力と言っても、どんな道具でサポートすれば良いか、詳しく調べる時間も惜しい。だから…………」

 そう言って、霖ちゃんはわたしの右手を握る。
 大きくて、ごつごつした手だった。

「無意識の中で迷ったら、僕を意識するんだ」

 そう、力強く言った。不思議と、その言葉には妙な力を感じた。
 霖ちゃんは強くない。
 弾幕ごっこもしないし、わたしの妖弾で気絶してしまうほど弱い。
 わたしにとってのあの巫女のように、憧れや恐怖といった手が届きそうにない存在とは真逆の位置にいる。
 今、近くにいてわたしを励ましてくれて助けてくれる。支えてくれる。
 世界を漂うわたしと共にある風じゃなくて、帰るべき安息の地。
 お姉ちゃんやお燐、お空のように……まるで、そうまるで家族のように確実にそこに居てくれる人。
 迷っても、霖ちゃんはここにいてくれる。光になってくれる。そう思うと、わたしは何でもできそうな気がした。
 わたしは左手でお姉ちゃんの手を握る。
 ごめんね。迷惑かけちゃって。
 あとで一杯叱って。何でも言って。全部受け止めるから。
 だから目を覚まして、お姉ちゃん。
 目を瞑って、意識を集中する。
 霖ちゃんの時のような感覚を思い出せ。思い出せなくても思い出すんだ――――
 





 広い空間だった。光はとっくの昔に途絶えている。そんな漆黒の世界に光条が差し込み、ある風景が作り出された。
 わたしはそこで、幼い頃の自分を見ていた。
 傍らにわたし以外の誰かがいた。あれは……整った顔立ちに、腰まである銀髪。その双眸は空色に輝いた美しい女性。

(…………この…………夢って…………)

 わたしとこの人の関係は、血の繋がらない身内。力もなく、地底でさ迷うわたしを拾い、育ててくれた恩人だった。
 彼女の教えの元、本や語りによって知識を身につけ、夜も勉強をする。そんな幼少時代。
 ただ、その妖怪の元でする勉強というのが、一般に広まっているそれと大きく違っていた。
 わたしは拾われてから、『まっくら部屋』に移された。『まっくら部屋』というのはわたしがつけた名称で、本当はどこにあったのかわからない。
 物心ついてから引き取られたので、それまでの記憶は途切れ途切れでしか思い出せない。
 そこで教えられたのは、想起の力だった。
 自分達を襲ってくる相手に能力を使い、倒す。ただ、それだけのことである。
 でもわたしはまだ子供で、相手は明らかに自分よりも力を持った者達だった。
 赤ん坊が大人に勝てないように、わたしには彼らに抵抗する力がなかった。普通なら、戦わせること自体が愚かなことだ。
 だから、わたしは普通ではない方法で彼らを退けてきた。それが、自分が生まれ持っていた――正確には持たされた《力》だった。
 生まれて間もないわたしが、なぜそんなことをさせられたのかはよく覚えていない。
 勉強は次第に、能力の制御へと変わっていった。
 そんな中、彼女の元で知識を深めていくにつれて、幼児ながらに自分がしてきた行為を知った。
 半ば逆切れして彼女に反発したこともあった。
 なぜあんなことをしなきゃいけないの、どうして能力を制御する方法なんて身につけなければいけないの、と。
 彼女は、宿命と言った。その力を持っている者の宿命だと。どうして、と訊ねるたび、決まってこう言った。

「その力を持つ以上、おまえは誰よりも恐れられ、殺されないために誰よりも強くならねばならない。おまえの持つ能力は、妖怪の絶望を背負っている。絶望に押し潰されないためにも、おまえは強くあらなければいけない」

 そんなの知らない。
 いつか自分に降り注ぐ厄災を跳ね除けるために力を身に付ける?
 なんでそんなことがわかるのよ。

「宿命だから。おまえがそれを否定しても、おまえの血の中に混じる力がそれを許さない」

 わたしは、その理不尽さに憤りを感じずにはいられなかった。慰めてくれない彼女に苛立って――わたしは、想起の力を使ってしまった。彼女なら、効かないだろうと思っていた。
 けど、結果は違った。彼女は、わたしの力によって滅んでしまったのだ。
 一人になっても、『まっくら部屋』を出ることは適わなかった。当時のわたしにとって、世界は自分と彼女しかいなかったからだ。
 彼女がいない今、世界から出たら他には何もない。一人で生き抜く強さは、わたしにはなかった。
 周りにいた妖怪達による反応も、『まっくら部屋』を出ない理由の一つだった。
 ――こいつ、気持ち悪い
 いつだったか、誰かがわたしを見てそんなことを言った。
 聞こえたくもない心の声がわたしの頭を埋めつくすのに、時間はかからなかった。
 それからしばらくして、わたしは無になった。いても認知されない、完全な虚無の存在となっていた。わたしを無視することが、妖怪達の暗黙の了解となっていた。
 だから、わたしはずっと引きこもっていた。
 そんな生活を続けていたある日、わたしは初めて姉の存在を知った。自分には血の繋がった、実の姉がいると。
 すぐに会いにいった。きっと、自分と同じような苦労をしているのだろう。自分だけがこんな目にあっているんじゃない。そう思っただけで、わたしは名前も知らない姉の存在に希望を抱いた。
 でも、わたしとお姉ちゃんは違った。お姉ちゃんは、わたしが手放した力を使いこなしていた。
 希望が絶望に変わった……そう思ったのは、自分の勘違いに過ぎなかった。
 元来の性格ということもあったけど、何より心の読めない自分を気味悪く思っているにもかかわらず、それでも見てくれたのだ。
 お姉ちゃんのおかげで、遊びを覚えた。
 自分のことを盛大に構ってくれた。それによって友達を失くしたらしいけど、それでも構わないと言ってくれた。
 お姉ちゃんのおかげでわたしの視野は一気に広まった。子供らしい遊びもいくつか教えてくれた。
 能力の使い方や、書物の知識などしか学んでいなかったわたしにとって、感銘を受けるには十分なことだった。
 お姉ちゃんとわたしが別れていたのは、わたし達の親を狙った妖怪によって赤ん坊同然だったわたしを含む家族がバラバラになってしまったから、らしい。お姉ちゃんは能力を使いこなしてわたしを探そうとしてくれていたみたい。わたしのほうが先に見つけちゃったけど、嬉しかった。
 ふと、ここで唐突にあの日の光景が視界に映る。
 今まで殺した妖怪達が放置されている、墓場とも言うべき部屋。
 わたしにとって、思い出したくもない忌まわしい『まっくら部屋』だ。
 さっきから意識があるせいで、目の前の光景に対してわたしは見ていることしか出来ない。
 程なくして、何度も悪夢で見た光景が映し出される。
 恩人を、数多の妖怪を殺すわたしの姿…………
 これは夢だ、夢だ、夢だ、夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢夢夢夢夢夢夢……
 わたしは必死でそう思い込んだ。意識があるのがもどかしい。早く覚めて。もう視せないで。もう殺させないで……
 でも悪夢は覚めない。
 とうに嗅ぎ慣れたはずの血臭や見慣れた死体が、鮮明さを増してわたしの眼に焼きついてくる。呪詛のように記憶に残る言葉が、一生消えることのない傷跡となってわたしを蝕む。
 わたしは逃げた。誰もいないところに。
 でも、そこは寂しかった。とても寂しくて、一人は嫌だった。
 妖怪が一杯いる場所にいると、悪夢を見てしまう。でも、一人よりマシだった。
 そんな中、わたしの前に光が現れた。
 光は姿かたちを持っていなかったけど、それがわたしの求めていた人なんだと漠然と感じた。
 その光が一緒にいてくれるだけで、わたしの悪魔は少しずつ消えていく。自然と、わたしは顔が綻んでいった。
 ああ、そっか。
 自分の存在を知らせなくたって、貴方はずっと、昔からずっと見てくれていたのね。
 後ろを振り向く。
 そこに、もう一つの光があった。わたしの求めていた光に比べて小さくて弱い。けど、決して消えない光だった。
 わたしは目の前にある光を掴んで、一緒に小さくて消えない光を目指した。
 二人一緒に、それに触れた。
 そこで、唐突に眼が開いた。
 眼が覚めたら、そこは天井だった。
 やはりあれは夢だった。





 僕はそっとこいしの手を離す。
 布団で横になるさとりは、微笑みながらこいしの頭を膝に乗せて優しく撫でている。
 こいしは涙を流しながら、決してさとりの手を離そうとせず布団に顔を預けて寝入っている。
 それは、こいしの虚無をかき消す美しさを持った一枚の絵画だった。
 
「おはよう、森近」
「おはよう、さとり」

 微笑むさとりに、僕は違和感を持った。
 落ち着きすぎている。まるで、最初から全部わかっていたように……

「騙しちゃってごめんね。その通りなの」
「…………色々と言いたいことはあるけど、今はいい。それより、対価をもらうよ」

 言いながら僕はこいしを起こさないように、さとりの隣へ移動する。眉をひそめる彼女に構わず、僕はメガネを外した。
 なぜか焦りだすさとり。心を読んで、僕のこれからの行動を理解したのだろう。ほら、こいしを起こさないよう気をつけろ。

「も、森近?」

 僕は頭をさとりの肩に乗せる。膝にこいしを乗せているのに加えて負担もあるだろうが、これくらい勘弁してくれ。
 全身に気を張って消耗していたせいで、すぐに睡魔がやってくる。僕は抵抗せず、それを受け入れた。

「…………ありがとう、森近」

 どういたしまして、と心の中で返事をしながら、僕は襲い来る眠気に誘われて意識を手放した。





 それから数日後。
 事実の確認も取るべく僕は霊夢に事の詳細を話していた。
 驚くべきことに、霊夢はそもそも夜中に外に出歩いていないと言う。なら、こいしが襲った霊夢は一体……

「多分、紫なんじゃない? 変装なんてお手の物でしょ、あいつなら」

 言われてみれば、確かにそれなら納得がいく。
 後でさとりから全ての顛末を聞いて判明したことだが、どうやらあの夜の襲撃から全てが紫とさとりによる芝居だったらしい。
 最初こそ憤った僕とこいしであったが、実際にさとりは眠ったままであり僕達が起こさなければ今もなお目覚めぬままだったと言う。紫に頼んで、そうしてもらったらしい。
 命がけとは恐れいる。まったく、とんでもない演技をしてくれたものだ。
 けれど、おかげでこいしの問題が解決したとなれば、良いことなのだろう。

「解決したの? 霖之助さん、こいしと仲良くするって言ってたんじゃ…………」
「いつでも、問題に対して答えがあるなんて考えてるうちは子供だよ。この世に正しい答えなど無い。だから皆悩む。だが自分にとって正しい答えならいつでも見つける事が出来る。僕にとっての正解と、こいしにとっての正解は違った。けど、それでいいと僕は思うよ」
「答えは一つで十分な気がするけどね。そっちのほうが迷わないし」
「なら霊夢。桜茶梅こぶ茶抹茶などなど、お茶の種類はいろいろあるが、これが全部統一して種類が一つしかなかったらどう思う?」
「やっぱり答えはいくつもあったほうがいいわ」

 そういうことだ。
 あれからこいしは無意味な殺掠などはしないと約束した。
 ピアスや腕時計は、僕やさとりと一緒に墓参りの遺品として置いておいた。人間の墓参りをする妖怪というのも珍しいが、こいしの戒めになるのであれば何も問題ないだろう。
 まだ第三の目を開けるには至らないようだが、そのおかげでさとりが助かったのだから、しばらくあのままかもしれない。
 それは逃げではない。こいしは自らの意志で選択肢を増やしたのだ。
 お姉ちゃんに出来ないことをわたしがして、わたしに出来ないことをお姉ちゃんがする。互いを助け合い、支えあえるからこの力も悪くない、とこいしは言った。
 それが彼女の答えというなら、僕が言うべきことはない。
 紫も妖怪を下手に減らすことがなかったのであれば、何も問題ないだろう。
 いや、待てよ?
 ひょっとして、この協力……対価になる、のか?

「霖之助さん、ここにあったお茶請けどこいったの?」

 気づけば霊夢がお勝手で僕を呼んでいる。
 あの位置にしまってあったお茶請けは、前に霊夢に強奪されたものより貴重で価値のあるものだった。
 それがないと言うことは……

「霖之助さん、これ」

 霊夢が僕に見せたのは、『歯車に小石を詰まらせた手間金、今月分を頂いておきますわ』と書かれた一枚の紙。
 以前、ストーブの代金として携帯ゲーム機を徴収したスキマ妖怪の伝言と似ている。
 しかし、歯車に小石……? 何のことだろうか。
 この時の僕は、こいしの問題が解決したことで少々浮かれていた。ゆえに、紙の内容に深く追求することなくその場は流した。
 それが後々、面倒なことになったと思い返す羽目になるのだが、今の僕はそれを知らずにいた。

「仕方ないわね、このお茶でいいわ」

 霊夢の言葉で我に返り、また一つお茶が香霖堂から消えていくのを見やる。
 仕方なくない。それは二番目に貴重なものだ。
 はぁっ、と深いため息をつく。

(まあ……あの光景を見られたのなら、安いものか)

 思い出すのは、古明地姉妹の寝顔。
 口元が緩む僕に対し、霊夢は言った。

「霖之助さん、覗きは犯罪よ」

 見ていたのか? と思わず言ってしまいそうだった。相変わらず反則じみた勘の冴えだ。
 僕は苦笑しながら、霊夢の入れたお茶を受け取る。
 太陽が頂点に上がるころ、僕は出かけると言って霊夢を店から追い出した。怪訝そうな顔をする霊夢だったが、地霊殿に行くという僕の言葉に納得してくれた。ただ、微妙に半眼になっていたがどうかしたのだろうか?
 気にせず、霊夢を見送った僕は店の表札を「休業中」に変えて鍵を閉める。
 お互いに色々と話したいことがある。多分、今日は泊まりになるだろうな。
 騒がしいのは苦手だが、こんな時くらいはいいだろう。思う存分、飲んで語って楽しもう。
 見上げれば、雲一つない夏の快晴が僕の視界に映る。
 本日も、幻想郷は平和な日を刻んでいた。







<了>

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プロフィール

鳩

Author:鳩
ついにブログ開設です。
オリジナル小説のほか、東方projectのSSを主に書いています。
最近はジャンル問わずの投稿小説サイトであるArcadiaや、東方SSサイトの大御所、Coolier-クーリエ-東方創想話で「鳩」名義で活動中。森近霖之助を主役に書いてます。
リンクはフリーです。
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東方・森近霖之助<いらっしゃい。折角だから、訪問記録をつけさせてもらうよ。


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